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ビザ(在留資格)の取り消し処分に関する統計が法務省から発表されました。

資格外活動などで2017年に在留資格が取り消された外国人が前年比91人増の385人に上り、統計の残る05年以降、過去最多だったとの発表です。

ビザ取消処分の統計データ

まずは、昨年1年間で執行されたビザ取消処分の統計データを見てましょう。

  • ビザ種別による取消処分件数

ビザ取消処分件数第1位

「留学」が最多の172人(全体の44・7%)。

ビザ取消処分件数第2位

日本人等配偶者で、67人(全体の17.4%)

ビザ取消処分件数第3位

「技術・人文知識・国際業務」で、66人(前提の17.1%)

  • 出身国別による取消件数

ビザ取消処分第1位の国

ベトナムの179人(46・5%)

ビザ取消処分第2位

中国84人(21・8%)

ビザ取消処分第3位

フィリピン30人(7・8%)

となっています。

法務省では、取消処分の背景にある原因として、

・留学生として留学生ビザを取得して日本に上陸した留学生が学校での授業に出席せずアルバイトなど就労に時間を費やしているケースの増加

・留学生ビザを取得する外国人の出身国として数年前からベトナムが急に増加した

としているようです。

留学生ビザが最多となった原因

留学生ビザの取消処分が一番多いとなった原因は、日本で就労する目的を秘して留学生ビザを取得し、留学生ビザの許可を得て上陸したら日本に居続けられるまで日本で働いて多額の報酬を稼ぐというケースが増加したからではないかと思います。他方、このような留学生ビザを取得した留学生を雇用する企業も増えてきたことも、この結果の原因の一つではないでしょうか。

ベトナム国が最多となった原因

また、国別でみたときにベトナム国籍の方が多いという結果は、数年前からベトナム人留学生が急増したことの現れと考えられます。つまり、一番多いという結果になったベトナム人が特に悪質な民族というわけではなく、単に母数が大きくなったというわけです。この意味でいま現在、愛知県や福岡県を中心にネパール人留学生が急増していますので、数年後の近い将来、この統計データ上にネパール国が現れるのではないでしょうか。

逆に、かつてはこのような統計で上位に位置付けていた中国が現れなくなったことも興味深いです。

中国人の友人に聞いても、一言でいえば、多額の借金を抱えてまで日本に留学生のビザで在留してお金を稼がなくても中国国内で稼ぐことが可能となったので、あえて留学生ビザをとってまで日本に来る意味(うまみ)がなくなったとのことです。

つまり、アジア各国の経済情勢が反映しているわけですね。

留学生ビザを持った外国人就労者

さて、留学生ビザで上陸した外国人留学生が就労すること自体は資格外活動を許可されていれば適法ですが、留学生ビザの取消処分を受けるほど悪質なケースでは、適法な資格外活動の制約(週に28時間を上限とする。また、風俗産業への従事は一律禁止とする)を破っている事実が判明し、不法就労と認定されるケースが多いとされています。

もっとも、留学生ビザを得た留学生が不法就労していなければ取消処分されないのかといえばそうではなく、資格外活動の制限を守っていても取消処分が執行されるケースも散見されます。例えば、留学生ビザをもって入学した学校に学費を納めず除籍処分を受けたにも拘わらず、除籍した事実を入国管理局に報告せず、そのまま留学生ビザの資格で日本に在留し続けている場合などです。

実際、わたしのところにも、留学生ビザをもってはいるけれど、学校に行ってない状態のまま相当期間が経過した時点で雇ってくれる会社を見つけたから、留学生ビザから就労ビザ(「技術・人文知識・国際業務」への変更申請をお願いしたいと相談してきた外国人もおりました。ちなみにこの相談者に対しては、学費未納で除籍処分を受けた事実を学校が入国管理局に報告しているので、変更申請しても在留資格の変更許可が下りる可能性は限りなくゼロに近いと回答し、受任はしませんでした。仮に留学生ビザから就労ビザへの変更申請しても、在留不良という理由で不交付処分となるのではないかというのが私の見立てです。

留学生ビザを持つ外国人を雇う企業様へ推奨する確認方法

既述のとおり、深刻な人手不足のため、留学生ビザでアルバイトを雇用する企業は、優秀な留学生を社員として雇用したいと考えるのも当然な判断かと思います。

企業は、アルバイトであっても正社員であっても、外国人を雇入れる際に、在留カードの確認が義務付けられています。この在留カードの確認により適法な就労が可能かどうかを判断できますし、同時に会社が違法就労に手を染めないための義務でもあります。

ただ、入管法が会社に義務付けられているのは、この在留カードの確認だけです。

もっとも、留学生ビザをもっていながらも、実は大学や専門学校、日本語学校から除籍処分を受けているという外国人もいます。

この場合でも在留カードの目視によるチェックでは、留学生ビザがあると確認されますので、不法就労であると知りながら雇用したということにはならず、留学生ビザに基づき雇用した企業が不法就労という犯罪を犯したため刑事罰が課せられるわけでありません。

しかし、そもそも、たとえ留学生ビザを持っていたとしても、所属する教育機関から除籍処分を受けた留学生はグレイゾーンです。また、万が一留学生ビザが取り消されたら雇用は継続できず、仕事場に迷惑がかかることも十分考えられます。留学生ビザから就労ビザへの切り替えを検討しても間違いなく入管は在留資格変更申請に対し不交付処分とします。つまり社員として雇用できないわけです。

そこで、義務ではなく任意ではありますが、アルバイトや社員に募集してきた外国人に対して留学生ビザを持っているかを確認すると同時に、所属する教育機関が発行する在学証明書の提出をお願いするという確認作業の追加を推奨します。

除籍処分を受けた外国人留学生は、手元に留学生ビザの在留カードを所持していますが、この在学証明書を手に入れることはできません。

ですので、「学校で在学証明書をもらってきてください」、とか、「応募にあたって在学証明書の提出をお願いします」とすれば、グレイな立場にいる(そして間違いなく学校にいってないことは面接の場では隠します)留学生ビザ所持の外国人とのかかわりを持たないで済みます。

人手不足の中、アルバイトや社員の募集に応募してくれる外国人留学生に対してこのようなフィルタリングをかけるのはなかなか躊躇することであることは承知ですし、心ぐるしいところもありますが、留学生ビザに基づく在留カードの提示と在学証明書の提出を雇用の条件にすることをお勧めします。

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留学生ビザについて行政書士の見解

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