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親権と監護権の分離

問)離婚を検討中ですが、夫は夫婦の未成年の子どもについて、母親の元で暮らし、母親が監護することは認めるが、親権は絶対に渡したくないと主張し、双方譲り合えないままの状態です。

このままでは協議離婚ができません。親権と監護権を分離するこの可否について知りたいです。

答)親権と監護権の分離は可能です。

もっとも親権と監護権の分離が可能としても、子の福祉の観点から親権と監護権の分属させることが相当でない場合もありますので、分離させることになんらかの積極的必要性が認めらる場合に限定されるべきです。

1.監護権とは

監護権は親権に含まれる親の権利と義務です。

具体的な内容としては、

・身上監護権

・教育権

・居所指定権

・職業許可権

・懲戒権

を含んだ権利と義務です。

他方、監護権を取り除いた親権には、以下の権利などが挙げられます。

・財産管理権及び子の財産に関する法律行為について子を代表する権利

・15歳未満の子の養子縁組や氏の変更などの身分行為についての法的代理権

・監護者に対する助言、指導

・子への面会交流

・経済的援助

2.親権と監護権の分離は可能か?

法は、未成年の子を有する父母が離婚するに際し、いずれか一方を子の親権者として定めることになっています(民法819条)。

そして、親権者に指定された者は、親権に基づき未成年の子を現実に監護養育していきます。

しかしながら、親の身上監護を単なる事実状態に置かず、親権者のほかに監護者の指定として民法766条を定めた民法の趣旨や、子の福祉の見地から、父母が離婚した後も、財産管理権を持つ親が協力しあう形が望ましい子もありえる話です。

そこで、父母のうち一方が親権を、他方が監護権を有することも可能です。

3.親権と監護権の分属が望ましい場合

これらの分属が考えられるのは、

・父母の一方が身上監護する者として適当であるが、身上監護以外については適任者ではない場合

・父母双方が親権者となることに固執する場合で、かつ、この解決が子の精神的安定に効果があると考えられる場合

・父母のいずれかが親権者になっても子の福祉にかなう場合で、かつ、出来るだけ共同親権の状態に近づけるという積極的意義が認められる場合

などがあります。

4.親権と監護権の分離の手続

離婚の際未成年の子の親権者と監護者を分ける手続きは、

・父母の協議による

・父母の協議が不可能な場合は家庭裁判所が定める

とされています(民法766条1項)。

5.具体的な方法

協議離婚の場合、離婚届には親権者の指定だけが記入できるようになっています。

したがって、後日の紛争防止のため、親権と監護権を分属させる取り決めができた場合には、その旨を記載した文書の作成を強く推奨します。

そして、文書も、当事者だけで私的に作成される離婚協議書ではなく、公証役場という国家機関において公証人という第三者が作成する公正証書によることをお奨めします。

親権は、未成年の子がいる夫婦の協議離婚の際に記載が義務付けられており、離婚の際の親権者の指定は当事者の協議によってなしえますが、離婚が成立したのち、親権者の変更する場合には家庭裁判所に親権変更を申し立て、家庭際場所裁判官による審判をへて変更が子の福祉の点で理にかなうといった審判を経なければ認められません。

したがって、親権と監護権の分属について口約束だですませてしまうと、分属について紛争が生じたとき、自分が納得して形成した合意が白紙になってしまう危険があるのです。

ちなみに、私も何件か親権と監護権の分属のご依頼を受け、公正証書を作成した経験がありますが、その際、公証人の先生から、分属を認めるべき積極的な理由付けを問われています。

このように、親権と監護権の分属は子の福祉を侵害しやすく、公証人という法律の専門家(公証人のほとんどは、裁判官か検察官のOBです)からみて慎重になりがちなのです。

とくにいったんは分属に合意したものの、後日考え直して、やはり親権に含まれる権利と義務をすべてとりたいとして改めて協議するケース。これも多いです。

父親の家庭にとって初めてできた直系卑属(要するに夫の家系のあととり)の場合、親族(おじいちゃんやおばあちゃん)がはじめてできた孫を渡したくないなどといってきて紛糾することもしばしばです。

他方、一般論として、親権者の指定につき、母親の愛情こそが子の健全な育成に欠かせないものであるという母親優先の原則があって、母親が親権者に指定されるのがほとんどの現実を見ますと、肝心の子どもが板ばさみになっていまします。

こうした場合、当事者だけの力では合理的建設的な合意の形成は望めず、協議の議論が平行線のままとなりますので、当事者以外の第三者のアドバイスを求めるとか、家庭裁判所に離婚調停を申し立てるといった解決策が望ましいといえます。