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問)妻が突然と消えました。家出です。もともと私とはほぼ毎日のように喧嘩して、争いが絶えない険悪な関係でした。そこで、いっそのこと離婚したいと考えていますが、妻が失踪して行方不明の場合にできる離婚手続きをおしえてください。

答)家出して行方不明の配偶者の居所がわかっている場合には、離婚調停を申し立てるところから離婚手続きが始まります。どうしても居所が判明しない場合には、所在不明を前提とした特別な手続きを申し立てることから離婚手続きを始めます。

離婚には、以下の方式が認められています。

1. 協議離婚

2. 調停離婚

3. 審判離婚

4. 裁判離婚


ご相談にあるような、配偶者が行方不明の場合には、当然1.の協議離婚をとることはできません。協議離婚の際に作成する離婚届には、配偶者双方が署名捺印しなければなりませんが、行方不明である以上署名ができないからです。なお例外的に配偶者本人の承諾により署名の代筆も合法ではありますが、代筆の場合には離婚が成立した後日、本人が承諾してはいないなどといった理由で離婚無効の調停・裁判が申し立てられる恐れがありますのでたとえ口頭で代理署名を承諾しても避けたほうが無難です。もちろん、本人の承諾なく勝手に署名捺印する行為は、刑法でいう偽造であって犯罪が成立する行為ですから、絶対に採用することはできません。

協議離婚という方式がとれないとすると、2.調停離婚の方式をとることができるかの検討になります。ここで、家出した後、さまざまな追跡調査を行って、失踪した妻(夫)の所在が判明した場合には、この所在地を調停申立用紙に記入し、この相手方の住所を管轄する家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。この場合、住民票記載の住所は無関係です。たとえば夫婦が東京都練馬区に住民票をもっていたが、家出した妻が実家のある千葉県木更津市にいることが判明した場合、失踪した妻が住民票を練馬区から木更津市に転入転出手続きをとってもとらなくても木更津市の住所を調停申立用紙に記入し、木更津市のその住所を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

ここで問題になるのは、いくら追跡調査しても居場所がわからない場合です。これは、DVから避難するためシェルターにかくまわれている場合などが考えられます。あるいは、夫(妻)がまったく知らない友人・知人宅にかくまわれている場合も当たります。

このような場合には、どのように調査しても居場所が割り出せないわけですから、調停申立用紙に相手方の住所を記入することができません。相手方の住所が空欄のままでは家庭裁判所は調停申立を受理しませんので、調停の申し立てが認められないようにも思えます。

しかし、このような事態で調停が申立ができないのは不都合ですので、相手方が行方不明である場合も家庭裁判所は離婚の成立にむけて手続きを進めるケースもあります。この場合は、

・申立人が相手方が住む所在地を八方手を尽くしてもなお判明しない

という条件を満たす必要があります。ここで八方手を尽くしても、というのがキーワードになります。すなわち、どの程度調査をすればこの条件がみたされるか、ですが、この例外的な手続きを取るかどうかは担当する裁判官の判断によりますので、この条件を満たしているかどうかの判断もまた、裁判官の判断にゆだねられており、形式的客観的な基準はありません。

しかし、本来当事者に弁明と聴聞の機会を保障するのが審判・裁判の原則であるいじょう(手続き保障と自己責任。デュープロセスともいわれます。憲法31条参照。)、相手方が行方不明であることを前提に手続きを進めるのはかなり例外的な措置といえそうです。そうすると、この「八方手を尽くして」という基準も厳しく厳格なものになるのではないでしょうか。少なくとも、実家や親族、友人、知人に電話しているかどうかを確認したといった程度では認められないのではないでしょうか。

以上東京家庭裁判所にて確認済。