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問)離婚を考えています。現在協議離婚について夫と合意がとれ、離婚届にも署名をしていただきました。これで離婚届を本籍地の役場に届け出れば離婚が成立しますが、未成年の子に対する養育費と慰謝料を離婚後も分割払いしてもらえるか不安です。そこで離婚に伴う公正証書を作成しようと思うのですが、離婚後の養育費には未払いが多いと聞きます。そこで、少しでも未払いを回避し支払を確実にするためのコツを教えていただけますか?

答)ご不安はごもっともなものだと思います。統計では、離婚後3年が経過した時点で養育費の支払いを受けている親権者は20%に満たないともいわれています。5人に4人が養育費を支払う約束を反故にされているのですね。
このような現状を踏まえますと、離婚の段階で公正証書を作成するとのご判断は賢明なものだと考えます。
公正証書は、記載されている金銭の支払いに滞りがあった場合、支払を求める裁判を提起せずとも直接差し押さえなどができる公的文書です。公正証書は公証役場という国の機関で作成されます。
さて、この公正証書を作成したうえで、支払が滞った場合に備えておくコツとして、差し押さえの際に必要とされる情報をあらかじめ(配偶者と連絡が取れなくなる前に)取得しておくことがあります。具体的には、差押える金融機関名と支店名です。
支払が滞った場合に強制執行を申し立てることになりますが、この申し立ての際に裁判所に提出する書類に、差押える金融機関名と支店名を記入しなくてなりません。当たり前のことですが、裁判所が差押を命ずる金融機関とその支店が特定できなければ、そもそも口座の差し押さえはできないのです。
従いまして、あらかじめ支払の義務を負う者の口座の金融機関名と支店名を把握することをお勧めします。
とくにサラリーマンなど給与をいただく人にとって、給与が振り込まれる金融機関の口座が凍結されるのは大きな痛手であり、支払に向けた強い効果を持ちます。もちろん口座に入金されている残高についても差し押さえによって未払い債務に充てることになります。
このように、あらかじめ金融機関名と支店名を把握しておくことが肝要ですが、ずるがしこく債務から逃げようとする者は、離婚後新たに金融機関で口座を開設し、その口座を主に使用するなどという逃げる手口を使う場合も十分考えられます。
このような事態を避けるためにも、勤め先の会社名と支店名、事業所名などをあらかじめ把握するとともに転職や転勤した場合には遅滞なくその事実を通知する義務を課す条項を公正証書に記載することや、金融機関口座を開設した場合にも通知義務を課すなどといった方策があります。
なお、どうしても金融機関名と支店名が不明で差し押さえの申し立てができない場合には、債務者が持つすべての金融機関名と支店名を開示するよう申し立てる方法もあります。
もっともこの方法は、公正証書による差押えの場合には請求できません。訴訟を提起し支払を命じる判決文(債務名義)にのみ請求が可能です。
従いまして、金融機関名と支店名が不明の場合で債務者(養育費などを支払う義務を負う者)のもつ金融機関名を知りたい場合には、いったん裁判を提起して勝訴判決を得る必要があります。